冬になると毎年話題になるインフルエンザ。感染力が強く、家庭や職場など身近な場所で広がることも少なくありません。咳やくしゃみをきっかけに家族全員が順番に発症する――そんな経験をした方もいるのではないでしょうか。この記事では、インフルエンザの感染の仕組みや家庭内での感染リスク、予防のポイントについて、国内外の研究データをもとにわかりやすく解説します。
1. インフルエンザの感染の仕組みについて
インフルエンザは主に「飛沫感染」と「接触感染」によって広がります。咳やくしゃみで飛び散ったウイルスを含む飛沫を吸い込んだり、ウイルスが付着した手で目・鼻・口を触ったりすることで感染します。特に乾燥した空気ではウイルスが空中を長く漂いやすく、冬場は感染のリスクが高まります。寒さによって人の免疫機能が一時的に低下することも、感染が広がりやすくなる一因とされています。インフルエンザは例年11月〜3月に流行し、寒さと乾燥がピークになる時期に特に注意が必要です。
2. 感染可能期間と隔離期間について
インフルエンザの潜伏期間は1〜3日で、発症前からウイルスを排出している場合もあります。感染者は発症後5日間、または解熱後2日間は他人に感染させる可能性が高いとされます。子どもの場合、学校保健安全法により「発症後5日かつ解熱後2日を経過するまで」は登校できません。成人については法律上の規定はありませんが、感染防止のために職場の規定を確認して慎重に復帰判断をするのが望ましいでしょう。
3.家庭内での感染率はどのくらい?
インフルエンザの家庭内感染率には、地域や治療のタイミング、家庭環境などさまざまな要素が関与するため幅があります。参考までに、いくつかの研究データをご紹介します。
大阪の医療機関による2018年度の報告では、発症から48時間以内にオセルタミビル(タミフル®)またはバロキサビル(ゾフルーザ®)を服用した場合、家庭内感染率はそれぞれ13.5%、9.0%にとどまりました[1]。
一方、アメリカの5州で行われた調査では、2019年以前の家庭内感染率は20.1%でしたが、2021年度の冬シーズンには50.0%に増加していました[2]。この増加には、パンデミック中のワクチン接種率低下による免疫力の低下、ワクチン株と流行ウイルスの型のずれ、在宅時間の増加による家庭内での接触機会の増加など、複数の要因が関与していると考えられています[2]。
4. 家庭内での感染を防ぐ方法
家庭内での感染拡大を防ぐには、マスクの着用、こまめな手洗い、アルコール消毒、室内の換気と加湿が基本となります。ウイルスは乾燥した環境を好むため、湿度を50〜60%に保つと効果的です。家族がインフルエンザにかかった場合、看病はなるべく1人が担当し、他の家族との接触を最小限に抑えましょう。使用済みのティッシュやマスクは密閉して捨て、高齢者や基礎疾患を持つ家族への感染予防には特に注意が必要です。
5. 医療機関受診について
インフルエンザの疑いがある場合、高熱、関節痛、倦怠感などの症状が強い時には医療機関を受診しましょう。特に38度以上の急な発熱があり、全身症状が現れる場合は、早めの診断・治療が重要です。高齢者や小児、妊婦、基礎疾患を持つ方は重症化のリスクが高いため、受診を急ぐ必要があります。感染拡大を防ぐため、受診時は事前に医療機関へ連絡し、指示に従うようにしましょう。
6.まとめ
インフルエンザは毎年多くの人が感染する身近な感染症ですが、感染経路や家庭内感染の特徴を理解し、予防行動を習慣化することでリスクを減らすことができます。
ワクチン接種、手洗い、マスク、換気・加湿といった基本的な対策に加え、家族内での接触を最小限にすることが大切です。感染が疑われる場合は早めに医療機関を受診し、家庭内での感染拡大を防ぐ行動を心がけましょう。
参考文献
[1] Umemura, T. et al. J Pharm Health Care Sci 6, 21 (2020).
[2] Rolfes, M.A. et al. JAMA 2023;329(6):482–489.